導入事例インタビュー

高度な習熟度を要するブランド品査定を、自社開発によるAI画像解析を活用してわずか3秒で実現

インタビュイー:バリュエンステクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO 深谷 良治(写真左) CTO 本田 崇智(写真右)

バリュエンスホールディングス株式会社が運営する実物資産管理アプリ「Miney(マイニー)」はリリース当初、全てのアイテムを査定員が他業務を兼務しながら査定していたため、査定金額をお知らせするまでに長時間を要していました。そこで同社は、グループの開発会社であるバリュエンステクノロジーズ株式会社に依頼して画像解析AIを導入。人材採用・育成コストを抑えたままで、アプリの利便性向上を実現しました。

導入先企業

バリュエンスホールディングス株式会社
https://www.valuence.inc/

所在地:〒108-0075 東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス 28F
グループ事業内容:買取事業、オークション事業、販売事業、アプリ運営、不動産事業
2011年12月設立。ブランド買取専門店「なんぼや」、BtoBオークション「STAR BUYERS AUCTION」、実物資産管理アプリ「Miney」などのラグジュアリーリユース事業を展開する。2020年3月、グループ体制を持株会社体制とし、バリュエンスホールディングス株式会社へ商号変更。第二創業期を迎え、リユース企業から「人生を変える価値」を提供する企業への変革に向けて邁進する。

  • 課題・背景

    ・査定から返信までを査定員が対応するため、査定金額が表示されるまでに長時間を要する
    ・査定には高度な専門性が求められるため、仮に査定員を増やせたとしても採用育成コストがかかりすぎてしまう
    ・営業時間外の査定依頼を翌日対応するのではなく、24時間対応できるようにしたい

  • 導入
    ポイント

    ・スマホで撮影したアイテムの査定価格を瞬時に算出する画像解析AIを導入
    ・導入提案にあたり、経営陣にAI査定の実現性を確認してもらうためのプロトタイプを構築
    ・事業会社と連携をとりながら、査定品質の高いサービスを構築

  • 効 果

    ・AI査定対象商品1件の査定から返信にかかる時間が、従来の1/200に削減
    ・24時間対応を実現し、サービスの利便性が向上
    ・電話やLINE経由での査定依頼に対応できる時間が増え、査定全体の返信スピードアップを実現

査定時間短縮と24時間対応を実現したいが人的リソースが不足

—資産管理アプリ「Miney(マイニー)」では、どのようなことができるのでしょうか?

深谷:Mineyは、所持品の実物資産としての管理・運用を提案する資産管理アプリです。査定したいアイテムの写真をスマートフォンで撮影し、基本的な情報を入力していただくと、そのアイテムの現在価値(参考価格)が分かります。

Mineyを使えば、お客様はどこでも気軽にアイテムの価値が分かり、キャッシュにするかどうかの判断をしやすくなります。また、グループ会社が運営する「なんぼや」をはじめとする買取専門店に行くきっかけにもつながります。

—リリース当初のMineyでは、アイテムをどのように査定していたのでしょうか?

深谷:実は当時は、査定員が1点ずつすべて目視で査定していました。ですから、どれほど頑張ってもお客様が写真を送信してから査定し、結果を返信するまでに10分以上の時間を要していました。

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—Mineyは直接利益を生み出すアプリではないことを考えると、高コストのサービスになっているように見えます。

深谷:そうなんです。Mineyで査定したアイテムを買い取り、それを販売することで当グループは利益を得ることができます。ですから、会社全体としての利益追求を考えると、Mineyによる査定時間を短縮するために人材採用・育成にコストをかけることは現実的ではありませんでした。

—仮に人材採用・育成コストをかけられたとしても、ブランド品質の査定は習熟が難しいでしょうから、一人前になるまでに多くの時間を費やす必要がありそうです。

深谷:おっしゃる通りで、実はブランド品の買い取りにおいて最もコストがかかる業務がブランド品の査定なんです。一目見て商品名や真贋を判定できるようになるまでには、数万点ものアイテム査定を経験したり、商品知識を習得したりする必要があります。一人前になるまでに、最低でも半年はかかる業務です。

—人による査定となると、営業時間外にアイテムの写真が送られた場合はどのように対応していたのでしょうか?

深谷:営業時間外に送られてきたアイテムについては、翌日に査定結果をお知らせしていました。つまり、リリース当初のMineyは「いま査定して、いま買取利用の判断をしたい」といったお客様のニーズに応えきれていなかったのです。

そのため、お客様のアプリ利用頻度を高めるためには、24時間で査定対応ができるサービスに改善すべきだと考えていました。

本田:画像認識の領域は、ここ数年のディープラーニング技術の発展により成果の出やすい分野の1つであり、当グループで保有している約5年分の買取アイテム写真をうまく活用すれば、AIによる自動査定も十分可能だと仮説を立てました。

導入のポイント

高精度の精査を実現するために、事業会社と連携して機械学習の頭脳を育成

—MineyへのAI導入は、どのようなプロセスで進めたのでしょうか?

深谷:当社ではAIのPoC(*1)だけに留まるのではなく、業務に活用していくためのデータベース再設計や業務システムへの組み込みまでワンストップまで対応できます。プロダクトとしてリリースできるまでの体制が揃っているので、改善提案をはじめとした企画段階から運用まで、すべて当社で請け負いました。
提案が通ってからAI・システム開発に着手し、およそ半年後には大手時計ブランドのAI自動査定機能をβ版としてリリースしています。現在では、AI自動査定ができる時計は16ブランドに増えています。

(*1)PoC(Proof of Concept)
新たな技術やサービス、アイデアの実現性を示すためのプロジェクト。AI開発でも最初のフェーズとして実施されることが多い。

▼ AI導入支援サービスの提供範囲比較
バリュエンステクノロジーズでは、自社グループのシステム開発を一気通貫して手掛けている実績を活かして、現場への実装までをワンストップで行います。

—事業会社でAIを活用したサービスをリリースできた企業はまだ多くはない中、先方がAI導入の提案に対して不安視する様子はありませんでしたか?

深谷:社内初となるAI導入を提案したので、実際に査定をする査定員と経営陣の双方から、それぞれ懐疑的な意見を受けました。査定員は「ブランド品の査定は高度な技術を要するので、実際に人が見て査定すべき」という先入観を持っていましたし、経営陣からは「AIでブランド品の査定が本当にできるの?」と疑問視する声が上がっていました。

本田:そこで、AIによる自動査定の実現性を示すことにしました。具体的には、自ら会社にある画像データをベースにしてAI自動査定のプロトタイプを構築しました。そして、プロトタイプ版を関係者の前で実際に動かして、AI査定が人による査定と同等の品質を担保できることを示したうえで、予算的にも十分に実現可能であると説明しました。

その結果、多くの賛同を得ることができて、本格的にプロジェクトを開始することになりました。やはり実際に動くものを作ることが、新サービスの実現性を示すのに一番効果があると思います。

—提案フェーズ以降で、特に力を入れて取り組んだプロセスを教えてください。

本田:AI自動査定の精度向上が一番大きな課題でした。この課題を解決するために、実装しては結果を検証し、精度が下がっている原因を見つけてまた改善していくというプロセスを、実用に足る精度に達するまで繰り返しました。精度が出ないと、すぐにモデルの改善やデータの追加をしなければいけないと思いがちですが、私の経験上、実際にはラベリングが間違っていたり、前処理がうまくいっていなかったりする場合が多いです。今回のプロジェクトでは、推測が間違っているパターンがあると実際にそのデータを確認し、原因を見つけることに注力しました。

深谷:精度を高めるためには、本田が話した技術的なアプローチに加えて、機械学習の結果を査定員の目で正確にチェックする必要もあります。査定金額に影響する箇所はどこか、どういう状態の時にいくらの査定金額になるのか、写真で見えない箇所をどのように判断して査定するかなど、確認すべき要素は多岐に及びます。

そのため、査定員2,3名に依頼して、画像解析に必要な頭脳を育てるための作業に協力してもらいました。既存の業務も抱える査定員が、いかに少ない労力で作業を進められるようにするか−−その仕組みづくりと査定員への説明には苦労しましたね。

本田:AI導入プロジェクトでは、依頼元の事業会社とシステム会社の双方がうまく連携して開発を進めることが大切です。MineyへのAI導入プロジェクトでは、私どもが査定員のノウハウの理解に努め、実際にAIに反映させるところが肝になりました。

▼AI導入支援サービス提供の流れ
バリュエンステクノロジーでは、AI開発とシステム開発を一括して実施。経営課題を解決するためのAIモデルを構築するだけでなく、現場での実用化に至るまでの仕組みづくりも、すべて当社で対応可能です。

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効 果

1アイテムあたりの査定時間はわずか3秒。他サービス経由の査定依頼も迅速に対応できるように

—AI自動査定を導入してから現在までの導入効果を教えてください。

深谷:査定のスピードは、査定員が対応するよりも格段に早くなりました。従来は1アイテムにつき10分程度の査定時間を要していましたが、現在は同じアイテムをわずか3秒で査定し、24時間対応でお客様に査定結果をお知らせすることができます。

AI自動査定のβ版リリースから1年間で、累計1,130件の利用がありました。現在MineyによるAI自動査定対象となっている時計カテゴリの査定金額はおよそ9億5,000万円で、これは時計の査定金額全体の10%にあたります。

—AI自動査定の導入効果で、査定時間が約1/200にまで減ったのですね。これまでAI自動査定に時間を費やしていた査定員の皆様は、新たに創出された時間をどのように活用していますか?

深谷:査定員はMineyのアプリ以外に、電話と「LINEで査定」サービスからの査定依頼にも対応しています。MineyのAI自動査定で短縮できた時間を電話とLINEから受けた査定依頼への対応時間に充てられるようになったおかげで、依頼に対して早くレスポンスできるようになりました。

このことは、お客様の査定待ち時間の改善に直結します。当グループとしては、買取店舗への集客ならびに売上アップのために重要な改善を実現できたと思っています。

—属人的になりがち、かつ習熟度が必要な査定業務については、AIに置き換える価値が大いにあったのですね。

深谷:これから労働者人口が減少するなかでは、若くて優秀な人材を獲得することはますます困難になると予想されます。また、高い習熟度を求める業務については採用・育成コストを多く費やさなければなりません。

こうした人材課題を解決する手段として、AIの導入は非常に効果的でした。査定だけに限らず、査定とにたような特性を持つ業務でこれまで一部の熟達者に任せていたものがあれば、AIに置き換えることで、サービスレベルを維持したまま、人材にかけるコストを抑制することも可能だと思います。

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今後の展望

AI自動査定の対象アイテムを拡大し、ブランド品の流通を促進するアプリに成長させていきたい

—さらにMineyの利用価値を高めるためには、今後どんな取り組みをしようと考えていますか?

深谷:最初にAI自動査定を始めた時計カテゴリでは、まだまだMiney経由での査定件数を増やしていきたいです。あと、時計以外のカテゴリにもAI自動査定の技術を展開していく予定です。最近になって不動産のAI自動査定サービスを始めましたが、バッグやジュエリー、アート作品など、あらゆるアイテムをAIで査定できるようにしたいと考えています。

—将来的に、Mineyはサービスとしてどのように成長させていこうと考えていますか?

深谷:お客様には、Mineyを実物資産のデータベースとして活用していただきたいですね。個々のアイテムの現在価値だけでなく売却履歴もデータに残るので、実物資産の金融資産管理をMineyの中で実現できるよう、改良を重ねてまいります。

ゆくゆくは、Mineyをブランド品の流通を促進するのに貢献できるアプリにしていこうと、現在構想を練っているところです。高価ブランド品を査定できることを強みとするMineyをプラットフォームにして、シームレスな売買を実現することで、大切なものの価値を次の人に繋いでいくリユースの良さを伝えていけたらと思っています。

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